誰の心にも、静かに動く羅針盤があります。
けれど、その針が指す方向は、誰一人として同じではありません。
それでいいのです。
むしろ、その違いこそが、私たちが共に生きる意味なのかもしれません。
自分の羅針盤が示す方角を信じるということは、
他人の針もまた、自分とは違う磁場の中で動いていることを認めるということです。
「あなたの北極星」と「私の北極星」が異なるのは当然で、
どちらかが間違っているわけではありません。
問題は、どちらの針が正しいかを競うことではなく、
お互いの針がなぜその方向を指すのかを、静かに理解しようとする姿勢です。
相互理解とは、同じ方角を見つけることではなく、
違う方角を持つ者同士が、その違いの中で調和を探すこと。
たとえば、ある人にとって“正しさ”とは誠実さであり、
別の人にとっては“優しさ”かもしれません。
一見、矛盾するように見えるけれど、
その根にはどちらも「より良くありたい」という願いがあります。
羅針盤の針は違っても、求めている磁力は、案外同じなのです。
世界の多様さとは、羅針盤の向きが交錯し、
複雑な磁場を作り出しているということ。
だからこそ、私たちは迷い、ぶつかり合い、
ときには針がぐるぐると回るような感覚に陥ります。
しかし、その混乱の中にも、確かに「共鳴の兆し」が潜んでいる。
違いがあるからこそ、響き合う余地が生まれるのです。
調和とは、同じ方向を向くことではありません。
異なる針が、互いを否定せずに存在できる状態のこと。
そのバランスの上に、人と人とのあいだの「やさしい張力」が生まれます。
それは、不安定でありながらも、美しい関係のかたちです。
HARMONEERという言葉には、
「異なる音が響き合い、ひとつの旋律になる」という願いが込められています。
世界が一つの正解で塗りつぶされてしまえば、
音楽は失われ、調和は静止してしまうでしょう。
だから私たちは、それぞれの羅針盤を持ったまま、
互いの針が指す先を少しだけ覗き合えばいい。
「あなたは、なぜその方向を選んだの?」
その問いかけこそが、真の理解への第一歩なのだと思います。
直観が導く“私の道”と、
あなたの羅針盤が指す“あなたの道”。
その交わる瞬間に生まれる響きこそ、
この世界が奏でるハーモニーの原型なのです。