重層する世界 ― それぞれの光を見て生きる

私たちはみんな、同じ世界に生きている。
──そう思っているけれど、本当は少し違うのかもしれません。

たとえば、モンシロチョウの羽。
私たちの目には白く見えますが、実は紫外線を反射しており、
チョウ同士にはきらめくような模様として映っています。
人間には見えない“世界の層”のひとつを、彼らは生きているのです。

イルカやコウモリが超音波で世界を感じるように、
動物たちはそれぞれ異なる“感覚の座標”を持っています。
同じ空間にいながら、まったく別の現実を見ている。

そしてそれは、人間同士でも同じこと。
遺伝、育った環境、受けた教育、
その日の体調や睡眠不足、心の状態。
ほんの少しの違いで、感じる世界は驚くほど変わります。

ある人には「静けさ」に聞こえる場面が、
別の人には「孤独」に聞こえるかもしれない。
同じ言葉を交わしても、そこに込められた意味がすれ違うこともあります。
そうした“噛み合わなさ”は、ときに悲しく感じるかもしれません。
けれど、それは誰かが間違っているのではなく、
**それぞれが違う層の光を見ている**というだけのことなのです。

世界は、一枚の平面ではなく、幾重にも重なった層のようなもの。
その層のあいだを、私たちは日々すれ違いながら、
ときに共鳴し、また離れていきます。

理解とは、その層を少しだけ“またぐ”ことなのかもしれません。
自分の見ている世界がすべてではないと知ること。
他者の感じている“音”や“光”に、想像の手を伸ばしてみること。
そこに、調和(ハーモニー)の入口があるように思います。

HARMONEERが大切にしている「調和」は、
すべてが同じになることではありません。
むしろ、違うままに響き合うこと。
異なる層を持つ存在たちが、それぞれの光を放ちながら、
互いの世界を少しずつ照らし合う。

モンシロチョウが仲間だけに見せる輝きのように、
私たちもまた、自分にしか見えない世界を生きています。
その光が重なりあうとき、
この世界はほんの少しだけ、深く、美しく見えるのです。