私たちは、言葉の中で生まれ、言葉に育てられ、そして言葉で悩みます。
うれしいとき、つらいとき、何気ない会話の中に――言葉はいつもそばにあります。
けれどその言葉が、知らないうちに「心を縛るもの」になってしまうことがあります。
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■ 1. 呪いの言葉 ― “誰かの声”が心の奥に残るとき
たとえば、子どものころに言われたこんな言葉。
– 「あなたは不器用だから」
– 「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」
– 「人前に出るのは向いてないよ」
言った人に悪気はなかったかもしれません。
むしろ愛情や心配から出た言葉だったのでしょう。
けれど、その一言が長い時間をかけて心に染み込み、
「私はそういう人間なんだ」と思い込んでしまうことがあります。
社会に出ても、同じようなことは起こります。
「新人なんだから意見するな」
「まだ結果が出てないだろ」
「この歳でその服?」
こうした“呪いの言葉”は、
あなたの行動を止めるだけでなく、あなた自身の声を小さくしてしまうのです。
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■ 2. ほどく鍵は、「経験」という現実
けれど、言葉は言葉。
現実は、もっと複雑で、もっと豊かです。
たとえば、
「人前で話すのが苦手」と思っていた人が、
一度だけプレゼンに挑戦して「うまくできなかったけど、伝わった気がする」と感じた瞬間。
その経験こそが、“言葉より強い証拠”です。
「できない」という言葉を、「やってみた」という現実が、静かに書き換えていく。
毎日でなくてもいい。
一言の日記、1枚の写真、短いメモでもいい。
それは、あなた自身が発した“言葉に勝つ”ための記録になります。
HARMONEERでは、そんな小さな「経験の痕跡」を大切にしています。
それは、誰かに見せるためではなく、
「自分を信じる根拠」を育てるための営みです。
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■ 3. 言葉の呪い ― 言葉が世界を切り取ってしまうとき
もうひとつの“のろい”があります。
それが「言葉の呪い」です。
たとえば、
「花」という言葉を口にした瞬間、
その香りも、風も、咲いた場所の空気も、言葉の外にこぼれ落ちます。
「健康」という言葉を聞くと、
多くの人は“体重”や“数値”を思い浮かべるでしょう。
けれど本当は、心の落ち着きや、人との関係、朝の光のあたたかさも“健康”の一部です。
言葉は便利な道具です。
でも、世界のほんの一部しか映せない鏡でもあります。
それが「言葉の呪い」。
言葉に頼りすぎると、見えないものを“存在しない”と思い込んでしまう。
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■ 4. 言葉の外にあるものを感じ直す
では、この「言葉の呪い」をほどくにはどうしたらいいのでしょう?
答えは、言葉を手放してみることです。
たとえば、
・スマホを置いて、風の音を聴く
・湯気の立つカップを両手で包む
・夜空を眺めて、言葉にならない感覚をそのまま味わう
そんな時間が、
言葉に切り取られた世界をもう一度“まるごと”感じるための練習になります。
詩を書くのも良い方法です。
詩は、一つの意味に決めないからこそ、
言葉の外に広がる余白を取り戻してくれます。
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■ 5. 二つの呪いは、深くつながっている
「呪いの言葉」は、他者との関係で生まれます。
「言葉の呪い」は、言語という構造の中で生まれます。
前者は「人との関係」を、後者は「世界との関係」をゆがめます。
でも、その二つは、まったく別のものではありません。
誰かの言葉で傷ついたとき、
私たちは世界を“狭く見る”ようになります。
でも、自然や芸術、音楽、身体の感覚を取り戻すと、
その言葉さえも、“小さな声のひとつ”として受け止められるようになる。
つまり、「回復」と「拡張」は同じ線の上にあるのです。
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■ 6. 今日からできる小さなこと
– 毎日3行だけ、今日の出来事と気づきを書く
– 「できなかった」ではなく、「まだ途中」と言い換える
– SNSではなく、ノートに自分の言葉を残す
– 他人の言葉に傷ついたら、「自分が見た事実」をひとつ思い出す
– 言葉にならない体験(音・香り・感触)を意識して受け取る
どれも、難しいことではありません。
でも、これを続けていくと、
“言葉に支配されない感覚”が少しずつ育っていきます。
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■ 7. 言葉とともに生きるために
言葉は、世界をつくる力を持っています。
けれど同時に、世界を狭くしてしまうこともある。
だからこそ、
言葉に寄りかかりすぎず、
言葉の外側にも耳を澄ませながら生きていくこと。
あなたの中にある“経験の痕跡”が、
誰かの呪いの言葉を、静かに物語へと変えていくでしょう。
言葉に傷ついたあなたも、
言葉で誰かを救うことができる。
そのどちらも、言葉の持つ力の一部です。
HARMONEERは、その力を「調和」として取り戻す場所でありたい。
小さな言葉、小さな経験、小さな気づきが、
あなたのハーモニーを紡いでいきます。