1|言葉は、運ばれてこない
昔は、言葉って「意味の入れ物」だと思ってました。
たとえば「大丈夫です」と言えば、
その中身の「大丈夫」が、そのまま相手に届く。
そんなふうに。
でも、どうやら違うらしいんですよね。
同じ「大丈夫」でも、
上司が言うのと、部下が言うのと、
妻が言うのと、子どもが言うのとでは、まったく違う。
状況も、関係も、空気も違うから、
同じ言葉でも、意味は毎回変わる。
つまり、言葉は運ばれてこない。
その場で、なんとなく立ち上がるものなんですよね。
2|会話は、意味を作る作業
だから会話って、
意味を「渡す」ものじゃなくて、
意味を「一緒に作る」ものなんだと思います。
話してみて、ちょっとズレて、
「あ、そういうことじゃなくて」と言い直して、
また少し近づいて、
それでもまだズレていて。
そうやって、行ったり来たりしながら、
なんとなく「これかな」という形になる。
最初から正しい意味があって、
それを正確に届ける、というよりも、
触りながら、整えていく感じ。
粘土みたいなものですね。
3|仕事は、ログだけでは進まない
この話、仕事でも同じで。
「進捗です」「完了しました」「問題ありません」
たしかに情報としては正しいんですが、
それだけだと、なぜかズレていく。
気づいたら、
- 方向が違っていたり
- 優先順位が変わっていたり
- そもそも目的が共有されていなかったり
ということが起きる。
で、「ちゃんと報告してたのに」と思う。
でも実際は、
報告していたのは「情報」であって、
共有されていなかったのは「意味」なんですよね。
4|ホウレンソウの、その先
よく「ホウレンソウが大事」と言われますが、
あれはどちらかというと、
「ちゃんと伝えましょう」という話です。
ただ、もう一段奥にあるのは、
「ちゃんと同じ理解になっていますか?」
という話なんですよね。
たとえば、
- 今やっていることは、本当に優先度が高いのか
- そもそもこの仕事は、何のためにやっているのか
- この進め方で、目的に近づいているのか
こういうものは、情報ではなくて、解釈です。
だから、ログを共有するだけでは足りなくて、
その都度、「今こう理解しています」を
すり合わせていく必要がある。
5|非定型の仕事ほど、会話が増える
手順が決まっている仕事は、
正直そこまで会話はいらないんですよね。
やることが決まっていて、
正解もだいたい決まっているので。
でも、
- 企画
- 改善
- マーケティング
- 新規事業
このあたりは、全部ふわっとしている。
正解がなくて、
状況もすぐ変わって、
前提も揺れる。
だから、
「合っているかどうか」を
定期的に確認するんじゃなくて、
ほぼ常に、すり合わせ続ける必要がある。
むしろ、
会話していない時間のほうが
ズレている可能性が高いくらいです。
6|うまくいく人は、解釈を話している
ここで少しだけ、実務の話をすると。
うまくいく人って、
事実だけじゃなくて、
自分の解釈を一緒に話しているんですよね。
「こういう状況です」に加えて、
「自分はこう理解しています」
「このまま進めて良さそうだと思っています」
みたいなことを添える。
これをやるだけで、ズレが一気に減る。
逆に、
事実だけを淡々と共有していると、
受け取る側が勝手に解釈するので、
そこでズレる。
7|ズレる前提で、ちょうどいい
で、たぶん一番大事なのは、
「どうせズレる」という前提を持つことです。
ちゃんと伝えれば分かるはず、
という期待を持つと、苦しくなる。
でも、
ズレるのが普通で、
会話はその修正のためにある、
と思っておくと、ちょっと楽になる。
8|言葉は、あとからついてくる
言葉って、先にあって使うものじゃなくて、
関係とか、状況とか、
その場の流れの中で、
あとから形になるものなんですよね。
だから、
「正しい言葉を選ぶ」ことよりも、
「一緒に形を整え続ける」ことのほうが、
たぶん大事です。
今日もまた、少しズレて、
少し直して、少し近づく。
それくらいで、ちょうどいいのかもしれませんね。