意味の生成について 第3回:ホウレンソウの、その先

1|言葉は、運ばれてこない

昔は、言葉って「意味の入れ物」だと思ってました。

たとえば「大丈夫です」と言えば、
 その中身の「大丈夫」が、そのまま相手に届く。

そんなふうに。

でも、どうやら違うらしいんですよね。

同じ「大丈夫」でも、
 上司が言うのと、部下が言うのと、
 妻が言うのと、子どもが言うのとでは、まったく違う。

状況も、関係も、空気も違うから、
 同じ言葉でも、意味は毎回変わる。

つまり、言葉は運ばれてこない。

その場で、なんとなく立ち上がるものなんですよね。

2|会話は、意味を作る作業

だから会話って、
 意味を「渡す」ものじゃなくて、

意味を「一緒に作る」ものなんだと思います。

話してみて、ちょっとズレて、
 「あ、そういうことじゃなくて」と言い直して、

また少し近づいて、
 それでもまだズレていて。

そうやって、行ったり来たりしながら、
 なんとなく「これかな」という形になる。

最初から正しい意味があって、
 それを正確に届ける、というよりも、

触りながら、整えていく感じ。

粘土みたいなものですね。

3|仕事は、ログだけでは進まない

この話、仕事でも同じで。

「進捗です」「完了しました」「問題ありません」

たしかに情報としては正しいんですが、
 それだけだと、なぜかズレていく。

気づいたら、

  • 方向が違っていたり
  • 優先順位が変わっていたり
  • そもそも目的が共有されていなかったり

ということが起きる。

で、「ちゃんと報告してたのに」と思う。

でも実際は、

報告していたのは「情報」であって、
 共有されていなかったのは「意味」なんですよね。

4|ホウレンソウの、その先

よく「ホウレンソウが大事」と言われますが、

あれはどちらかというと、

「ちゃんと伝えましょう」という話です。

ただ、もう一段奥にあるのは、

「ちゃんと同じ理解になっていますか?」

という話なんですよね。

たとえば、

  • 今やっていることは、本当に優先度が高いのか
  • そもそもこの仕事は、何のためにやっているのか
  • この進め方で、目的に近づいているのか

こういうものは、情報ではなくて、解釈です。

だから、ログを共有するだけでは足りなくて、

その都度、「今こう理解しています」を
 すり合わせていく必要がある。

5|非定型の仕事ほど、会話が増える

手順が決まっている仕事は、
 正直そこまで会話はいらないんですよね。

やることが決まっていて、
 正解もだいたい決まっているので。

でも、

  • 企画
  • 改善
  • マーケティング
  • 新規事業

このあたりは、全部ふわっとしている。

正解がなくて、
 状況もすぐ変わって、
 前提も揺れる。

だから、

「合っているかどうか」を
 定期的に確認するんじゃなくて、

ほぼ常に、すり合わせ続ける必要がある。

むしろ、

会話していない時間のほうが
 ズレている可能性が高いくらいです。

6|うまくいく人は、解釈を話している

ここで少しだけ、実務の話をすると。

うまくいく人って、

事実だけじゃなくて、
 自分の解釈を一緒に話しているんですよね。

「こういう状況です」に加えて、

「自分はこう理解しています」
 「このまま進めて良さそうだと思っています」

みたいなことを添える。

これをやるだけで、ズレが一気に減る。

逆に、

事実だけを淡々と共有していると、
 受け取る側が勝手に解釈するので、

そこでズレる。

7|ズレる前提で、ちょうどいい

で、たぶん一番大事なのは、

「どうせズレる」という前提を持つことです。

ちゃんと伝えれば分かるはず、
 という期待を持つと、苦しくなる。

でも、

ズレるのが普通で、
 会話はその修正のためにある、

と思っておくと、ちょっと楽になる。

8|言葉は、あとからついてくる

言葉って、先にあって使うものじゃなくて、

関係とか、状況とか、
 その場の流れの中で、

あとから形になるものなんですよね。

だから、

「正しい言葉を選ぶ」ことよりも、

「一緒に形を整え続ける」ことのほうが、
 たぶん大事です。

今日もまた、少しズレて、
 少し直して、少し近づく。

それくらいで、ちょうどいいのかもしれませんね。